個人事業主と法人の7つの違いを一覧で比較|メリット・デメリットも解説
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事業を始めるにあたり、個人事業主と法人のどちらを選ぶべきか、迷ってしまう方は多いのではないでしょうか。
また個人事業主の方のなかには、なんとなく法人化に憧れている方、法人成りするとどうなるのか気になる方もいるでしょう。
こんな疑問を解決するため、この記事では「個人事業主と法人の7つの違い」を一覧で比較していきます。
個人事業主と法人の7つの違い比較一覧
それでは早速、個人事業主と法人の7つの違いを一覧で比較してみましょう。
項目 | 個人事業主 | 法人 |
1.事業開始に必要な手続き | 開業届の提出 ・開業届提出に伴う費用はなし ・簡単な書類作成のみ |
法人登記の申請 ・定款の認証手数料や登録免許税など数十万円が必要 ・手続きが煩雑 |
2.税金 | ・所得税 ・住民税 ・個人事業税(事業所得290万円を超える部分) |
・法人税 ・法人住民税 ・法人事業税 |
3.経費計上できるもの | ・事業上の必要経費のみ | ・事業上の必要経費 ・経営者の給与(役員報酬) ・生命保険料 |
4.赤字の繰り越し | 3年(青色申告の場合) | 10年 |
5.経理処理 | ・確定申告を行う ・法人に比べ容易なので自分で処理可能 |
・決算書の作成・確定申告を行う ・複雑なため税理士費用が必要 |
6.社会保険 | ・従業員5名未満は任意 ※雇用保険・労災保険を除く |
加入義務あり |
7.社会的信用力 | 法人より低い | 個人事業主より高い |
それぞれの項目について、ひとつずつ詳しく解説していきますね!
1.事業開始に必要な手続き
事業を始める際、個人事業主の場合は「開業届」を税務署に提出するだけで手続きが完了します。
【徹底解説! 】個人事業主の開業届|提出するタイミングや書き方、メリットやデメリット
一方、法人設立する場合は、個人事業主として開業するよりも手続きが煩雑です。ざっくりとした法人設立の流れは以下のとおり。
2.定款(ていかん)の作成
3.公証役場での定款の認証
4.会社の印章作成
5.出資金の払込み
6.法務局へ登記申請
定款(ていかん)とは
会社運営のルールを記載した書類のことです。
株式会社や一般社団法人などを設立する場合は、作成した定款の正当性を公的に証明する「認証」という手続きが必要となります。
また定款の認証手数料や登録免許税など、会社の設立費用として数十万円がかかります。
■株式会社の設立費用のイメージ(電子定款の場合)
項目 | 費用 |
定款の認証手数料 | 5万円 |
定款の謄本代 | 2,000円 |
登録免許税 | 15万円 |
印章作成 | 1万円 |
合計 | 21万2,000円 |
個人事業主なら費用0円&簡単な書類提出で開業できますが、法人は設立費用や出資金の準備が必要なうえ、手続きも大変なのです。
2.税金
個人事業主と法人では、納める税金の種類が違います。
- 個人事業主の場合…所得税・住民税・個人事業税
- 法人の場合…法人税・法人住民税・法人事業税
各税率は所得などの条件によって変わってきます。
個人事業主の所得税率は5%~45%と累進性が急激なので、所得が低い場合は納税額を抑えられますが、逆に所得が高くなるほど税負担が大きくなります。そのため事業の所得が増えてきたタイミングで、法人成りを検討する個人事業主の方は多いです。
■所得税の税率
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円 から 329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円 から 694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円 から 899万円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円 から 1799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円 から 3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
■法人税の税率(資本金1億円以下・過去3年の平均所得が15億円以下の場合)
所得金額 | 税率 |
年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円超の部分 | 23.2% |
このほか個人事業主も法人も、課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納付義務が発生します。
3.経費計上できるもの
個人事業主も法人も事業上の必要経費の計上が可能ですが、その判定基準の範囲は個人事業主よりも法人のほうが広いです。
大きな違いとして、個人事業主の場合は「経営者の給与(役員報酬)」「生命保険料」を経費計上できませんが、法人の場合はできます。経費が多いほど課税所得を抑えられるため、より納税額を少なくできるメリットがあり、その点では法人のほうが有利です。
個人事業主の経費については、以下の記事で詳しく解説しています。
法人の経費については、以下の記事で詳しく解説しています。
4.赤字の繰り越し
個人事業主と法人では、赤字の繰り越しできる年数が違います。
- 個人事業主…最長3年(青色申告の場合)
- 法人…最長10年
そもそも赤字にならないのが一番ですが、開業当初や大きな設備投資をしたときなど一時的に利益の出ない年もあるでしょう。そのようなときも、翌年以降に赤字を繰り越して相殺することによって、将来的に黒字になった年の節税ができます。
赤字の繰り越しをしたいなら、青色申告承認申請書を忘れずに提出しておきましょう。
詳しくは、確定申告で赤字が出たら?青色申告をするメリットと申告書B第四表(損失申告用)の書き方をご覧ください。
5.経理処理
個人事業主も法人も日々の取引を記帳して確定申告(所得の申告と納税額の計算)を行いますが、個人事業主と法人では経理処理の難易度や手間が違います。
個人事業主の記帳・確定申告は比較的簡単なので、経理知識のない人でも会計ソフトを使って自分で処理が可能です。
自分で確定申告をする方法&以下のシートは、【確定申告を自分でやる人必見! 】かんたんに確定申告をやるポイントとは?の記事をご覧ください^^
一方、法人の経理処理は難解です。特に決算書の作成は、総勘定元帳・勘定科目明細書・概況説明書など必要な書類が多数あるため、税理士に依頼するケースが多くあります。
6.社会保険
法人を設立したら、自分も含め従業員を社会保険に加入させなければなりません。社会保険は以下の5種類があります。
社会保険の種類 | 事業主の加入義務 | 対象となる従業員 | 保険料負担 |
健康保険 | ○ | ・一般社員 ・一定以上の労働時間&日数の短時間労働者 |
事業主・被保険者で半額ずつ負担 |
厚生年金 | ○ | ・一般社員 ・一定以上の労働時間&日数の短時間労働者 |
事業主・被保険者で半額ずつ負担 |
介護保険 | ○ | ・一般社員 ・一定以上の労働時間&日数の短時間労働者 ※40歳以上のみ対象 |
事業主・被保険者で半額ずつ負担 |
雇用保険 | 原則対象外 | ・一般社員 ・一定以上の労働時間&日数の短時間労働者 |
事業主と被保険者で負担 |
労災保険 | 原則対象外 | ・すべての従業員(短時間労働者も含む) | 事業主が全額負担 |
上の表のとおり、ひとり社長の会社でも健康保険・厚生年金・介護保険に加入する必要があります。また事業主の保険料負担が発生する点も要注意です。
一方、個人事業主として事業を営む場合、従業員が5名未満なら健康保険・厚生年金・介護保険への加入は任意です。
このように個人事業主と法人では社会保険の加入義務が違うため、保険料負担の大きさが変わってきます。
7.社会的信用力
個人事業主と法人を比較すると、やはり法人のほうが社会的信用力は高いです。そのため高額な融資が必要なときや出資者を募りたいときは、法人のほうが有利となるでしょう。
また求人を出す際も、法人のほうが応募者が集まりやすいかもしれません。
個人事業主と法人のメリット・デメリット
ここまで個人事業主と法人の7つの違いを解説してきました。
■個人事業主のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・開業手続きや経理処理が容易 ・所得が低い場合の所得税率が低い ・それなりの社会的信用がある |
・自身の給与や生命保険料を経費計上できない ・所得が高くなるほど所得税率が割高になる ・高額な融資を引きにくい |
■法人のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・事業所得が多い場合は節税になる ・法人設立後2年間は消費税納付が免除される ・役員報酬(自分の給料)を経費(損金)にできる ・個人事業主以上の社会的信用を得やすい |
・会社設立の費用がかかる ・経理処理が難しく、税理士費用がかかる ・社会保険料の負担が大きくなる |
法人の節税については、法人化した際の5つの節税効果!デメリットやタイミングも解説!で詳しく解説しています。
まとめ:個人事業主と法人の違いを踏まえたうえで法人成りを検討しよう
この記事では「個人事業主と法人の7つの違い」を一覧で比較してみました。
個人事業主と法人のどちらがいいとは一概には言えないため、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて最適な形態を選ぶことが大切です。小さく事業を始めるなら、とりあえず個人事業主でスタートして、のちのち法人成りを検討してみてはいかがでしょうか。
本格的に法人設立を検討している方は、税理士などの専門家にも相談しつつ慎重に判断してくださいね!
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