【徹底解説! 】個人事業主の開業届|提出するタイミングや書き方、メリットやデメリット
フリーランスとして事業をはじめる場合、開業届を提出しなければなりません。提出しなくても罰則はないですが、開業届を提出するメリットは多くあります。
この記事では、以下のことについて解説しています。
- 開業届の概要や提出するタイミング
- 開業届を提出するメリットやデメリット
- 開業届の書き方や提出方法
この記事を読めば、開業届を出すメリットやデメリットについてわかるようになります。
フリーランスとして事業を成功させたい方はぜひ読んでみてください。
開業届とは事業をはじめたことを税務署に申告する書類
開業届とは「事業を始めたことを税務署に申告するための書類」で、正式な書類名は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。開業するときだけでなく、廃業時も提出が必要な書類です。
開業届は、事業を行う(事業所得)のであれば、フリーランスだけでなく、副業目的の会社員も提出しなければなりません。これから事業をはじめるフリーランスはいつまでに開業届を出さなければならないのでしょうか?
開業届を出すタイミングは決まっている
開業届を出すタイミングは、所得税法第229条に定められており、事業を開始した日から1か月以内とされています。また、新規開業時だけでなく、事業所を増やした場合や移転する際も提出が必要です。
開業日については、お店を開いた日やはじめて売上が発生した日が該当します。
開業届を期限までに提出できなかった場合は、何らかの罰則があるのでしょうか?
開業届を出さなくても罰則はないが・・・・・・
開業届は所得税法により提出の義務があります。しかし、期限を過ぎて提出した場合や提出をしなかった場合も罰則はありません。
そのため、提出しなくても罰則がなければ、出さなくても良いのでは? と考えがちです。しかし、開業届を提出すれば、さまざまなメリットがあるため、すでに提出期限を過ぎている場合も早めの提出をおすすめします。
なお、開業届は事業をはじめた日が開業日になりますが、提出日については変えられません。たとえば、令和2年10月1日に事業を開始したケースで考えてみると以下のようになります。
提出日 | 開業日 | 提出日 |
10月30日(期限内)に提出したケース | 令和2年10月1日 | 令和2年10月30日 |
12月1日(期限をすぎた)に提出したケース | 令和2年10月1日 | 令和2年12月1日 |
国や自治体から個人事業主が給付金を受け取る際に開業届の提出を求められることがあります。その際、●月●日以前に開業届を提出していなければ、給付の条件を満たさないことも想定されます。(令和2年の持続化給付金の申請の際に実際にあったことです。)
たとえ給付は受けられても、開業届に代わる書類を用意する手間や時間がかかるのです。
フリーランスが開業届を提出する3つのメリット
事業をはじめるフリーランスであれば開業届は提出することをおすすめします。なぜなら、開業届を出せば、以下の3つのメリットを受けられるからです。
- 青色申告をすれば節税できるようになる
- 屋号つきで仕事ができるので、社会的信用を得られる
- 事業の証明になる
順番に見ていきましょう。
1.青色申告をすれば節税できるようになる
開業届を出した場合、青色申告承認申請書も提出すれば、確定申告時に青色申告ができるようになります。青色申告を行う主なメリットは以下のつです。
- 最大65万円の青色申告特別控除が受けられる
- 青色事業専従者給与が利用でき節税ができる
- 赤字を3年間繰り越せる
青色申告の最大のメリットは、条件を満たせば青色申告特別控除が受けられることです。青色申告特別控除とは、青色申告を行った人のみが受けられる特典のようなもので、節税ができる仕組みです。
所得税は、収入から経費と控除を引いた課税所得によって決まります。
たとえば、課税所得が500万円のときに65万円分の青色申告特別控除を利用できれば、課税所得は425万円に減ります。課税所得が減少すれば納付する所得税も減るため節税効果があるのです。
さらに、青色事業専従者給与も利用できるので、一緒に暮らしている家族や親族を従業員として雇用した際に支払った給料を経費にできます。
個人事業主が家族を雇用するさいのメリットや手続きについては個人事業主が家族を雇用するメリット・デメリット|手続きの方法は?条件は?で詳しく解説しています。
なお、青色申告をした際のメリットについては、青色申告と電子申告をしないと損する?メリットはある?で解説しています。
2.屋号つきで仕事ができるので、社会的信用を得られる
開業届を出すと、屋号つきで仕事ができます。
屋号とは?
フリーランスなど個人事業主が利用する以下のような商業上の名前を表します。
法人でいう会社名のようなものですね。
- ●●商店
- ●●事務所
- ペンネーム
屋号をつければ、取引先や金融機関などからの信用が高くなるため、以下のようなメリットがあるのです。
取引先 | 受注を受けやすくなる |
金融機関 |
|
取引先からの信用を得ることで成約率が高くなる可能性があります。また、屋号つきの銀行口座を作れるので、事業用と私用で口座を分けられます。
3.事業の証明になる
開業届を提出すれば、開業届の控えが発行されます。開業届の控えは事業を行っている証明になるため、銀行口座の開設や給付金を受け取るための条件を満たすことが可能です。
また、事業を開始したばかりの時期であれば、開業届の控えはいつでも提出できるように持っておきましょう。なぜなら、開業届は確定申告書の代わりになるからです。
ただし、開業届を提出すれば、税務署に対して事業を開始することを知らせることになります。
したがって、確定申告をしなければ脱税の疑いをかけられるので注意してください。
フリーランスが開業届を提出するデメリット
フリーランスとして事業を行うのであれば、開業届を提出するメリットは大きいです。ただ、ケースによっては以下のようなデメリットもあるため、提出時期に注意しましょう。
- 失業手当をもらえない
- 配偶者の扶養に入っていると扶養から外れるケースもある
失業手当をもらえないかも・・
開業前に雇用保険に入っていた場合は失業手当を受け取れますが、開業届を提出するタイミングに注意しなければなりません。というのも、開業届を提出することは、就職する意思がないとみなされる可能性があるからです。
そもそも、失業保険は就職をする意思があっても就職ができない方しか受け取れません。開業届を提出してフリーランスになった場合、収入が少ない場合でも失業保険は給付されなくなります。
なお、フリーランスとして開業した場合でも再就職手当をもらえますが、失業給付金の受給手続きをしていることが条件です。
配偶者の扶養に入っていると扶養から外れるケースもある
あなたが配偶者の扶養に入っている場合に開業届を出す場合は注意してください。配偶者の扶養に入っている場合、一定の所得を越えなければ健康保険料の支払いが免除されます。
ところが、加入している健康保険組合によっては、所得や収入にかかわらず開業した場合、扶養から外される可能性があるのです。そのため、開業届を出す前に、健康保険組合の規約などを確認しておきましょう。
また、これらのデメリットについては、開業届を税務署に提出すると失業給付や扶養の点からはどう?税務署に目をつけられる??でも解説しています。気になる方はぜひ参考にして見てください。
開業届の書き方や提出の手順を解説!
ここからは開業届けの書き方や提出の手順を解説します。以下の手順に沿って提出しましょう。
- 開業届の書類を手に入れる
- 開業届に記入する
- 税務署に開業届を提出する
- 青色申告するなら青色申告承認申請書も提出
1.開業届の書類を手に入れる
まずは開業届を入手します。開業届は最寄りの税務署の窓口に取りに行くか国税庁のホームページからダウンロードできます。
税務署の窓口は混んでいるケースも想定できるので、国税庁のホームページからのダウンロードがおすすめです。
開業届のダウンロード、書き方については以下よりご覧いただけます。
2.開業届に記入する
続いて、開業届には以下のように記入をしましょう。
タイトル | 個人事業の開業・廃業等届出書と記載されていますが、開業に◯をつける |
納税地 | 自宅もしくは事務所の住所を記入 |
個人情報を入力 |
名前、生年月日、マイナンバー、職業などを記入 名前の横に印鑑を押す |
左上の税務署長の欄 |
税務署長の空欄に所轄の税務署(自宅に近い)の名前を記入 書類の提出日を記入 |
届け出の区分 | 開業に◯をつける |
開業日 | 事業を開始した日を記入 |
開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 | 必要な書類に◯をつける |
事業概要 | 事業内容を具体的に記入 |
給与等の支払いの状況 | 一緒に生活をしている家族や親族を従業員として雇っっている場合は人数や税額の有無を記入 |
納税地については、特に申請をしなければ自宅の住所に近い税務署になります。
税務署に開業届を提出する
次に開業届を税務署に提出しましょう。税務署がある場所がわからない場合は、国税庁ホームページの税務署の所在地などを知りたい方でも調べられます。
税務署に平日の昼間に行ける | 税務署の窓口に提出する |
平日の昼間に時間がないが税務署で提出したい | 夜間や休日に設置される時間外収納箱に提出する |
忙しくて税務署の行けない | 郵送で提出する |
税務署に行けるのであれば、税務署に提出をしても構いません。ただ、仕事が忙しく税務署に行く時間がない場合は、郵送で提出しましょう。
郵送方法については、開業届を作成して、郵送する方法で解説しているので、参考にしてみてください。
青色申告をするなら青色申告承認申請書も提出
もし、青色申告もしたいのであれば、青色申告承認申請書も同時に提出してください。青色申告承認申請書には提出期限があるので、忘れないうちに提出しておいた方が良いです。
- 申告をする年の3月15日まで
- 1月16日以降に開業した場合、開業日から2か月以内
青色申告承認申請書についても、開業届と同じく税務署の窓口や国税庁のホームページで入手できます。
まとめ:フリーランスは開業届を出した方が得られるメリットが多い
フリーランスとして事業をはじめる予定の方やすでに事業をはじめているものの開業届を出していない方は、開業届を出すことをおすすめします。開業届を出せば、青色申告も可能になるため、節税が可能だからです。
また、社会的信用も得やすくなるため、事業用の銀行口座を開設したい場合や取引先からの信用を気にしているのであれば、提出しましょう。
なお、開業届を出した場合、確定申告のことも考えなければなりません。もし税理士に依頼する費用がない場合や自分で確定申告をしたい場合は、オンライン教材を利用すれば、自分で確定申告をすることも可能です。